marukunの日記

365日ちょこっと成長

映画「羊の木」栗本さん

羊の木を見てきた

hitsujinoki-movie.com

珍しく映画を見てきた。羊の木。

見終わったあと、いい意味で

何も感想が出てこない映画だった。

 

面白いとか面白くないとか、

普段映画をほとんど見ない私には分からない。

スカッと終わる話じゃないから。

 

ただ、あまりにも心が「じめっ」として

何から感想を吐けばいいのか分からないのだ。

 

あるさびれた街に6人の転入者がやってくる。

対応する市役所職員の月島と訳アリの彼ら。

全員刑務所帰り、殺人犯。

 

羊の木 栗本さんのストーリー

くせしかない登場人物のなかで

今回は栗本さんについて考えてみた。

 

以下ネタバレ入っています。

 

栗本さんは夫のDVに耐えかねて

突破的に夫を殺してしまった

いわば被害者でもある。

 

夫と暮らしていた毎日は、

どんなに辛かったことだろう。

 

夫の存在におびえ、

声におびえ、影におびえる。

 

それは自分の存在を消し、声を消し

影を消す生活。少しでも彼の気に障れば

殴られる。それを地獄と言う。

 

自分の生きている理由も分からず

人生に何の楽しみも希望もない。

 

夫に手をかけたことは

許されないかもしれないけど、

彼女は「生きたい」と行動したのだ。

 

生きたいと思う、その行動の第一歩が

殺人だったけど、彼女は刑期を終え

小さな田舎町にやってきた。

 

古びたアパート。小さな部屋。

でもそこは彼女にとって、自由に息が出来る

安心で安全で、くつろげる自分の城。

 

彼女は新しい仕事先で

古びたプレートを見つける。

羊の木のプレート。

 

それを、玄関の内側に飾る彼女。

殺風景な部屋の中では、

唯一の飾りでありインテリアでもある。

 

彼女は家の横に小さな生き物のお墓を

何個も作る。丁寧に穴を掘り、高く土を盛る。

自分が犯した罪を償うかのように。

 

そして彼女にとってはお墓は終わりではなく

再生でもある。いつかそのお墓から

植物の芽がでて大きくなると信じている。

 

羊のプレートはまさにそういう事を

象徴している。

大きな木の枝から何匹もの羊が生えている。

 

この、やっとつかんだ平穏な日々の中で

小さな死を弔いながら彼女は生きていく。

 

最後にお墓から小さな芽が出る。

きっと彼女はその芽に水をやり

肥料をやって大きくするのだろう。

 

彼女の夫もいつかは植物になって

大きな木となり、

優しい羊を実らせるかもしれない。

 

人生は死と生の繰り返しであり

再生でもある。

 

今は人前ではオドオドして、ある意味挙動不審

「普通の人」とは言い切れない。

表情一つ変わらない。

 

そんな栗本さんがいつか心から笑って、

今生きている生を喜んでも良いと

楽しんでも良いと

 

いつか感じてくれたなら

彼女の本当の人生が始まるのかもしれない。

 

栗本さんに想いを馳せた時間でした。